ライフスタイルブランド

ブランディング案件で、お客さまから「ライフスタイル提案」を行なっていきたいというご要望は多い。ソリューションとして、商品カテゴリーやサービスなどを拡充する方法もあれば、販売チャネルを変更または増やす方法もあれば、異業種ブランドとのコラボという方法もある。PR戦略としてポップアップで期間限定でブランドカラーやブランドロゴを使ったスイーツやラテアートなどが売り(インスタ映え目的で)のカフェをやってみるという方法もある。どれが最善の方法かはブランドの方向性次第。

ただ、ポップアップのカフェは表参道・原宿・渋谷エリアではやり尽くされ感満載で、小麦粉・乳製品・砂糖たっぷりのいかにも原価率低そうなポップアップ用の安っぽいスイーツにはどんなに好きなブランドのロゴがあっても分別ある消費者は易々とは騙されなくなってきている。場所はポップアップ専門のレンタルスペースか既存のあまり特徴のないカフェを丸ごとまたは一部のメニューでコラボするなどで済まされることが多く、結果的にブランドの価値を上げるどころか、下げてしまうこともある。

先日行ったマリメッコ主催の没入型カルチャーイベントBar Unikkoは一線を画していた。マリメッコの代表的なお花のプリント柄Unikkoの誕生60周年を記念し、2024年のミラノ・ファッションウィークで初披露されたBar Unikko。ヨーロッパ以外の開催は東京が初で、開催場所は1967年創業の四谷の老舗ジャズ喫茶「いーぐる」だった。1週間だけの期間限定だったが、店内にはUnikkoのプリントのファブリック、コーヒーやスイーツ・軽食、水を提供する食器は全てマリメッコ(メニューは通常メニュー)、Bar Unikkoの世界観で選曲されたジャズの楽曲という空間。そこにマリメッコのワンピースを着て行き、マリメッコの食器でガトーショコラとコーヒーをいただきながら、心行くまでジャズを聴く(お店の方針で18時までは私語厳禁)、そんな心豊かな時間を過ごした。
Unikkoのプリントと同じぐらい歴史あるジャズ喫茶、ガチにジャズを聴く人向けの私語厳禁、素晴らしい音のサウンドシステム、ポップアップ用のメニューを無理に作るのではなく、通常メニューにUnikko柄の旗を立てる程度の演出、そんな空間での開催はマリメッコのブランド価値を確実に上げていると感じた。SpotifyにはBar Unikkoとして朝・昼・晩に聴く用の3つのコンピレーション(選曲もデューク・エリントン、キース・ジャレットからKyoto Jazz Massiveや細野晴臣まで幅広く、センスがいい)に加え、Bar Unikko Tokyoのコンピレーションも加わっていた。

これまでジャズ喫茶に足を運んだことのない人たちも「何かジャズっていいな」「かっこいいな」と感じ、興味を持つきっかけになるかもしれない。本気でライフスタイルブランドを目指すなら、カルチャーの要素をセンスよく、ほどよいさじ加減で入れられるか、そこが大切だと身をもって感じたイベントでした。